受験時期によって、学校は前半校と後半校に分けられます。
2017年度実施試験までの傾向になりますが、
前半校(5-8月筆記)は琉球、富山、香川、医科歯科、大阪、滋賀医科、岡山、愛媛、新潟、筑波、高知、神戸、名古屋、北海道です。
後半校は(9-11月筆記)千葉、島根、旭川医科、福井、長崎、鳥取、群馬、浜松医科、金沢、大分、鹿児島、山口、秋田、弘前です。
これらの中から自分の学力に応じた受験校を10校程度選んでいくことになります。
筆記を通過し出すと、筆記と面接が交互に訪れてきて毎週末非常に忙しくなってしまいますが、
まずそんなに通過しないので、とりあえず狙えそうなところには全部願書を出す、というのが良いと思います。
一般的には、前半校で学力の高い人たちは抜けてしまって、後半校の方がレベルが下がるという話が言われていますが、
実際は必ずしもそうではありません。前半校で抜けていても、後半校を志望している人たちは、前半校を辞退して後半校に
進学していきます。前半校で筆記さえ通過していたら、追加合格になる可能性は十分にあります。ですので、自分の属性から
見て受験できそうな大学であれば、迷わず筆記を受験することをオススメします。
受験すべき前半校と後半校を、属性別に分けてみます。
学力の高い研究系の人
前半校:医科歯科、滋賀医科、大阪、新潟、筑波、神戸、名古屋
後半校:千葉
コメント:
この属性の人はどこでも受かりますが、学力の高い研究系の人が合格しているイメージの学校をまとめます。
滋賀医科、医科歯科は、英語と生命科学ができれば合格している人もいますが、学力のレベルが頭一つ分抜けています。
大阪は言わずと知れた学士編入の最難関、受けているだけで人とは違う感じがします。新潟と筑波は、科目構成が
大学入試や院試などの普通の筆記試験と近く、また面接点が低いことから、学力の高い人が合格しているイメージです。
神戸と千葉は英語ができ、かつ研究系の人が最終合格まで進んでいるようです。
英語ができる人で、そして高校レベルの物理化学ができない人
前半校:琉球、富山、滋賀医科、岡山、北海道
後半校:群馬、旭川、金沢、大分、鹿児島
コメント:
英語は伸ばしにくい科目なので、英語ができる人(TOEIC 800以上目安)は最初から有利です。
ですが、それだけでは合格は難しいです。英語ができる人の多くはほかの科目は苦手だったりして、
結局全てに強い人はそうそういません。とは言え、英語ができるというだけでチャレンジできる学校は
少ないです。富山と群馬は毎年傾向が変わりますが、英語力さえあれば筆記試験を突破できる可能性は高いです。
TOEFLが80以上取れる人は、岡山と金沢で可能性があります。
琉球は、いろんな科目がありますが、なんだかんだ英語と生命科学がそこそこのレベルであれば筆記突破できる
可能性が高いです。定員5人ですが、10人以上は自体する学校ですので、筆記突破してしまえば合格は近いです。
受けない人も多いため、一応琉球は受けておくことをお勧めします。
琉球・富山・北海道では簡単な統計の問題が出ます。統計は、時間の制約上難しい出題はできず、問題のパターンも
限られており、カイ二乗検定、標準偏差、T検定、最小二乗法などしか出ないため、統計対策は一通り済ませておくことを
オススメします。流すだけなら20時間で終わります。
滋賀医科、北海道は合格者のレベルが高いため、英語ができても戦えるかは微妙なところです。
滋賀医科は、英語と生命科学の2科目が解ければ受かるとされていますが、合格レベルに届くには他より頭一つ抜けた学力が必要です。
北海道は、合格者はほとんど全て他を蹴って入学する人たちです。北海道を目指すにはしっかりした学力が必要なイメージです。
岡山、金沢は、TOEFLがある前提で、生命科学をやりこめば勝負できます。TOEFLが取れる人は、他を犠牲にしてこの2校を
本命として集中しても良いかもしれません。長文での記述が必須になります。
旭川は、筆記は通過できるかもしれませんが、面接で北海道出身者が優遇されることで有名です。北海道にゆかりのある人は、
旭川1校を本命に対策しても良いかもしれません。北海道にゆかりのない人でも1名程度は合格しているようです。
大分、鹿児島は、英語ができると有利ですが、英語だけでは合格できません。2科目に絞って勉強している人の生命科学のレベルは
押しなべて高く、それに太刀打ちするには、英語だけでは不十分です。個人的には、英語がTOEIC 800程度あって、
生命科学が偏差値60まで上がったら、物理と化学の勉強を始めるべきだと考えています。科目を絞っている人と勝負すると
倍率が高くなってしまうので得策ではありません。
英語ができる人で、高校レベルの物理化学ができる人
前半校:琉球、富山、香川、滋賀医科、岡山、愛媛、高知、北海道
後半校:島根、旭川医科、福井、群馬、浜松医科、金沢、大分、鹿児島、山口、秋田、弘前
英語がTOEIC 800レベルにあり、かつ高校レベルの物理と化学が解けるとなると、各段に合格の可能性があがります。
生命科学はKalsのテキストを勉強すればだれでも必ずできるようになりますが、
英語・物理・化学はやり方を間違えると伸びないからです。そういう意味では、この属性の人は非常に有利です。
愛媛は物理1問、化学1問、生命科学2問という構成です。2016年度入試までは物理で微分方程式が出ていたため
そこだけ対策すれば勝負できたのですが、2017年度入試で傾向が変わり、コンデンサーの問題が出たため、
物理を絞って対策していた人は撃沈しました。愛媛の生命科学は難問なので差がつきにくく、物理と化学で明暗が分かれました。
また、愛媛は募集要項にも記載がありますが、筆記を通過したら一旦リセットされ、面接点だけで評価されるという学校です。
プレゼンの準備が必要になりますが、学力に自信のない受験1年目の人は、愛媛を受けてみると良いかもしれません。
5人の枠に30人が筆記通過して面接で戦うことになるので、それなりに倍率が高くなります。
高知は、マークシート式の試験を採用している珍しい学校です。記述の対策をしなくて良いこと、生命科学の出題範囲が
高校レベルであることから、対策がしやすいです。英語は難易度が低く、数学の出題があるという特徴があります。
数学を少し解けるような、理系の人でしたら、受験してみると良いと思います。高知も面接点が大きいという噂がありますが、
自分で確認したわけではありませんので真偽は分かりません。
福井は英語と生命科学メインの他の科目が少し混ざってくるという学校です、推薦状が不要なため受験生が多い傾向にあります。
もともとは前半校の人気校だったようですが、後半になってからはそこまで、というイメージです。2017年度の受験では、
過去問と同じ問題が出たことから、過去問対策をしっかりしていた人には有利に働いたようです。
浜松医科大学は、物理と化学に対応できたら非常に狙いたい学校です。生命科学ができなくても、合格の可能性があります。
物理は大学レベルの力学と、基礎的な熱力学の穴埋め等がでます、化学はSP軌道など大学をかじったレベルの基礎的な内容、
生命科学は一風変わった問題がでます。英語はTOEFLと近い出題で、長文記述がでます。大学レベルの物理化学に完全に対応できなく
とも、一部回答して、生命科学と英語で得点できれば十分合格を狙える学校です。関東出身者にとっては、東京から近いのも魅力的です。
山口はマーク式かつ高校レベルの生命科学しかでないという話でしたが、2017年度は難化したという話を聞きました。
学力レベルが大学レベルに対応できなくとも、高校範囲をきっちりやれば筆記は通過でき、かつ、面接をしっかり見ることから
面接で人と差別化できる人にとっては狙いやすい学校です。秋田は書類審査があり、書類を通過できるかどうかに年齢を見られており、
25歳以下が有利ですが、書類通過してしまえば受験者の学習度は高くなく、比較的有利に合格できます。最後に、弘前ですが、
弘前はセンターレベルの数学・物理・化学・生命科学に対応でき、かつTOEFLである程度以上の得点ができれば受験ができます。
英語がちょっと得意で、物理と化学もセンターレベルなら、という方には非常に受けやすい学校です。合格者人数も20人と
受け皿も大きいために、最後の砦として受けておきたい大学です。筆記試験の時期も11月末と、国立大学の学士編入の中で一番最後です。
弘前は面接点が大きく、合格者の出る面接室が偏るという話があり、第一志望にするにはリスクが大きいですが、
最後もう後がない、という人は受けてみると案外チャンスがあるものと考えます。
東京近辺に通いたい人
前半校:富山、医科歯科、筑波、滋賀医科、新潟
後半校:千葉、福井、群馬、浜松医科、金沢
コメント:
東京生まれや東京住みで、東京から近くの学校に通いたい人向けのリストです。
飛行機に乗りたくない人も一定数いて、そういう人にも適用されます。一部、遠いところも含みます。
学力が高い理系の人は医科歯科、筑波、千葉に行けたら一番近いですが、なかなか難しいですね。
それ以外だと近い順に群馬、浜松、富山となります。この3校は英語がそこそこできれば現実的に狙えるので、
ここを第一志望軍として計画を立てていくと良いと思います。少し遠くなりますが、それ以外にも新潟、金沢、福井が
それなりに東京から近くなります。細かいことを言えば他にもありますが、必要な学力と東京からの距離のバランスを考えると
現実的なラインでは、狙いやすいのが浜松かと思います。
生命科学ができるけど他の科目はできない人
前半校:琉球、愛媛、高知
後半校:島根、旭川医科、長崎、鳥取、群馬、大分、鹿児島、山口
コメント:
医薬系の専門の人に多いパターンです。実は受験者層の中で一番多いと思います。選べれば、この層との闘いは避けるべきです。
生命科学は科目の特性上、やった時間に応じて誰でもできるようになってしまいます。大学できっちり生命科学を勉強した人や、
予備校で専念して生命科学ばかりやっている人に対して生命科学で勝負を挑むのは分が悪いです。一方で、生命科学が本当に
得意なら、少ない勉強でほかの科目を最低限やっていち早く合格することも可能です。入学してしまえば、必要な科目は実質
生命科学だけになるので、後々まで役立つことを考えると一番実用的な科目に強い、恵まれた層です。
基本的には生命科学を中心に他の科目の負荷が低いところか、そもそも必要な学力水準が高くない可能性があるところを狙っていくことになります。
この層に関しては、旭川と鳥取をオススメします。生命科学がしっかり出てきて、配点が大きいので、それだけで十分筆記を突破できます。
旭川は前述の通り北海道出身者でないと厳しいですが、鳥取は狙いやすいと思います。また、長崎や大分や鹿児島もKalsの生命科学の
問題をしっかりとけば英語が苦手でも対策が可能です。愛媛・高知・山口は必要な学力が低い可能性があり、物理と化学を少し勉強して
ここを狙うのもありかと思います。
大学物理/化学ができる人
前半校:香川、愛媛、高知
後半校:島根、福井、浜松医科、大分、鹿児島、弘前
大学レベルの物理か化学、特に物理ができる人は有利です。ほかに物理ができる人が少ないので、差別化が容易です。
具体的には香川と浜松の2校を本命として受験できます。物理の力は一朝一夕で身につくものではなく、多くの人は
対策が不十分なままになってしまうので、ここを得点源にできると強いです。特に浜松医科大学では物理を完答できると
他の受験生にかなり差をつけられると思います。大学化学は、実はできる人が意外と多い分野ですが、とは言え島根は必ず大学レベルの
化学が出題されますし、最近では大分と鹿児島にもその傾向が出てきそうです。
また、物理や化学の得意な人は数学も少しの時間で学習できる可能性が高く、そういう意味では高知・弘前等の数学が出題される
学校を狙うことができます。
その他の特徴
秋田:25歳以下が有利。書類を通過しない。
旭川医科:北海道出身者が有利
長崎:直属の上司の推薦状が必要、卒業後5年間長崎に残る必要あり。
コメント:
特殊な条件の学校を記載しました。
秋田は若い人しか通らないというのが通説ですが、2017年度もその通りになりました。
20人の書類通過から5人合格するので、若い人は秋田を本命にできます。一方で書類通過の基準も不明確なので、
書類が通過したら本気で対策する、という形になると思います。
以上のように、前半校と後半校に分かれていますが、自分の属性によって受けるべき学校は変わってきます。
学校を絞り込んだうえで、難易度が高いと言われている前半校でも、成績上位者は抜けてしまうので、
前半・後半関係なく受けられるものを全て受けていく必要があります。